
開校当初、「補習校は日本語で」をモットーに、子どもたちも、先生・保護者も意識して英語を使うことを避けていました。見学に来た人たちも、「英語が聞こえない学校だね」と言って、驚いていました。
本校は日本の幼稚園、小学校と同じような教育環境を目指しました。土曜校に入ったら、日本語で会話して、勉強も日本語で考えたり、読んだり、書いたりします。そのおかげで永住(日本語が第二言語)の子どもたちの日本語力はぐんぐん伸びました。
コロナ禍の数年間は「補習校は日本語で」という大切なルールまで壊してしまいました。もう一度、原点に戻って、「補習校は日本語で」を心に刻んでほしいと思います。
補習校では原則として英語使用を禁止しています。授業中だけでなく、補習校にいるあいだ中とお考えください。年齢、学年、コースによる配慮はありません。ただし、子どもの安全にかかわる緊急時はこの限りではありません。校内で子どもの英語を耳にしたら保護者の皆さんも「日本語で話しなさい」「補習校は日本語だよ」と注意してあげてください。大人が総力をあげて子どもを指導するという学校にしたいものです。
なぜ英語使用を禁止にするか、専門家の著書から少し引用してみます。イマージョン教育の第一人者中島和子氏(トロント大学東アジア研究科名誉教授。カナダ日本語教育振興会名誉会長、母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)学会名誉会長) は次のように書いています。
「バイリンガルを育てる上で一番大切なことは、二つの言葉を使い分ける状況を作り出すことです。つまり、言語形成期の子供が言葉の使い分けをしなければならない状態に置かれると、必要に迫られて二言語でも三言語でも自然に習得していくのです。小さい子に二言語を強要するなんてかわいそうだとか、無理だとか思いがちですが、言葉の使い分けというのは、そんなに特別なことではありません。(中略)子供に使い分けを強いたからといって、知能の発達が遅れるとか、性格が曲がるとかということはなく、むしろモノリンガルに比べて、話し相手に対する配慮ができるとか、言葉で相手を判断しなくなるというプラス面が実証されています。」
現地校では英語、補習校では日本語で、家庭では母親と日本語で…などときちんと使い分けをすることが二言語習得の原則となっています。
中島氏は次のようなことも書いています。
「外国語に堪能になるためには、幼稚園から始めて約5,000時間必要といわれています。これは英語を第一言語としている者がフランス語を学ぶ場合の結果ですから、文法構造の違う言葉を学ぶ場合はもっと時間がかかると思ったほうがよいでしょう」
幼稚園から中三まで11年間を補習校で学んでも、2,772時間(一日6時間×年42日×11年)です。5,000時間にはとうてい及びません。補習校で過ごす日本語の時間に、家庭や日本帰国時の日本語の時間を加算して初めて5,000時間に達することが可能になります。
過去に本校保護者が寄せてくれたメールを紹介します。
毎回、学校ニュースを読ませていただきすごく勉強させて頂いております。何故、土曜日返上で学校にやるのか、何故子供に日本語を学ばせるのか、親として考えさせられます。自分の子が学校に行く時必ず言う事があります。「たくさん遊んで楽しんで来てね」
これは現地校でも補習校に行く時でも同じです。但し、現地校に行く時には言わない一言があります。「友達や先生とは日本語で話すこと!英語でしか分からない言葉があったら、必ず知ってる人に<日本語でなんて言うの?>と聞きなさい」…(中略)… 日頃、家庭では親子分かり合える仲で日本語を使いますが、一歩外(親の居ない所)に出て日本語を聞き、話すという機会(補習校など)はとても貴重です。「聞く、話す」だけでなく、教科書を「読む、書く」など、この国に住みながら学べるのは補習校以外にはありません。何故、日本語なのかは勿論、私が日本人だからでしょう。我が子に、出来る限り日本を知って欲しい、日本語を習得して欲しいからだと思います。
補習校で勉強する上で一番大切なことは何かと言われたら、「日本語を話し、考えること」と答えたいです。この学校は日本語を聞いたり、話したりして、日本の学校で学ぶ国語や算数を勉強するところです。この学校へ入ったらスイッチを切り替えて、日本語を使って、日本語で考える一日にすること。幼稚園児は日本語をたくさん聞いて、たくさん話してほしい。小学生はその上に漢字の習得と教科書の音読をしっかりと続けてほしい。もう一度、「補習校は日本語で!」 この言葉を決して忘れないでください。
- 藤家 管幸
- メルボルン補習校名誉校長
日本で32年の教職経験を経て、2005年4月からメルボルン国際日本語学校校長を勤める。 2009年12月同校退職。2011年4月メルボルン補習校校長に就任。2016年メルボルン補習校名誉校長に就任。





