
絵本をたくさん読んでもらった幼児は、文字を習得すると、本に興味を持つようになり、やがて自ら読書に親しむようになる。読書力は諸学の基礎であり、子どもの学習能力を左右すると言っても過言ではない。
幼稚園に入園してはや二か月、友だちや先生の日本語に慣れてきたころだろう。園児に絵本を読み聞かせる好機が到来している。4歳、5歳は母語の基礎を作る時期である。絵本の読み聞かせは、目と耳から入る情報を駆使して、言葉を理解し、想像力をたくましくすることに役立つ。
園児の母語が英語なら、母語を定着させることを優先する。まずは英語の絵本、第二言語の日本語絵本はそのあとでよい。母語の習得を主体にすればセミリンガルの心配はいらない。母語の基礎が完成する6歳、7歳以降、バイリンガル、バイリテラシーを育てる適齢期にスムーズにつなげることができる。

さて、絵本の読み聞かせを始めるにあたって、「いつ」行うか、を考えておきたい。親が仕事で疲れているとき、子どもが欲していないとき、仕方なくやるような状態はできるだけ避けたい。また、寝かしつけるために読み聞かせはしない方がよい。もし、寝かしつけることを目的にする場合は本を選ぶ必要がある。読み聞かせる時間は子どもの脳が活発なときがよいが、親子の時間がなかなか一致しない。脳が活発なのは朝から午前中と言われる。平日仕事がある場合、親の帰宅後から夕食までの時間帯となるだろう。平日が難しい場合でも、日曜日の朝~午前中ならできようか。たとえ週一回でも積み重ねれば効果は大きい。家庭のルーティーンにすると案外楽である。子どもが興味関心を持ってきたら、遠方に住む祖父母にオンラインで依頼したり、本校のウェブサイトから紙芝居ビデオを見せたりする手もある。ただし、読み聞かせは親子のラポール(信頼関係)を形成する目的もあり、オンラインやタブレットはこの点で不向きと心得ておきたい。
群馬県館林市に住む、読書アドバイザーの上沢弥寿子さんの講演資料から、読み聞かせのポイントを以下に抜粋した。(字数の関係で文意を変えないように一部の文を短くした)
「読み聞かせ」ってすばらしい!
本を読んでもらうと、子どもたちは頭の中で言葉の意味を理解し、想像の翼を広げます。そうすることで実際に経験していない事柄でも、その気持ちを理解し、豊かな心を育てることができます。読み聞かせは「子どもたちの心に種を蒔(ま)く」ということです。その種がいつ芽を出すか、どんな実をつけるかは読み手にはわかりません。ですが、その種が子どもたちの小さな一歩を手助けするものになるかもしれません。
大人のメリットは、子どもの感情を生で感じ、子どもの心に同調することで絆を深めることができることです。
まず「絵本」に実際にふれてみてください。決して子どもだけのためではありません。大人でも存分に楽しむことができるものです。ここに選書のヒントがあります。
絵本を読むのは義務と思わないでください。それだと自分も楽しくないし、子どもも楽しくありません。本屋さんや図書館などの絵本の森からどんぐりを拾うみたいに探してみましょう。さまざまな絵本の中から自分の好きなものを見つけましょう。「これは面白い」と思ったものは絶対子どもたちにも伝わります。自分の心が動いた本を読むときには気持ちがこもるもので、子どもたちも聞いていて楽しめます。
★絵本の選び方…自分が読んであげたい本、子どもが好きそうな本、子どもの発達に合った本
☆姿勢…小さい子は抱っこして、大きな子は身体の一部が触れるくらい近くで、子どもが絵本に触られるような姿勢をとります。
★読み方…心を込めて、あせらずに、ゆっくりと、はっきりと読む。途中で子どもが邪魔をしたら、子どものペースに合わせます。
☆読み終わったら…読み終わりはあっさりと。感想などしつこく求めないようにしましょう。子どもと楽しい時間を過ごせたことを自分へのご褒美にしてください。一緒に楽しんだことで、子どもがまた「本を読んで」って言ってくれるかもしれません。
本に親しむ習慣は幼稚園でぜひ身につけたいもの。それには家庭で絵本をたくさん読み聞かせること。読み聞かせのサークル等に参加することもよいでしょう。読み聞かせは子どもの集中力や想像力、ストーリーの理解力を育み、ひいては読書力を習得させることになる。
1冊の本は一人の先達の英知を結集したものである。100冊読めば100人の先達の英知に触れたことになる。そこに子どもを導いてあげたいものである。


- 藤家 管幸
- メルボルン補習校名誉校長
日本で32年の教職経験を経て、2005年4月からメルボルン国際日本語学校校長を勤める。 2009年12月同校退職。2011年4月メルボルン補習校校長に就任。2016年メルボルン補習校名誉校長に就任。





